●本授業の目的およびねらい
時を正確に測ることは学問研究に欠かせない.ここで取り扱うのは,地球の形成から現在
までの地球史に関わる年代測定である.地球の年代,隕石の年代,鉱物の年代,岩石の年
代,遺跡から発掘された土器や人骨の年代,古代のヒッタイト人が使った鉄器の年代,古
文書の年代,さらに刑事事件における遺体の生年や死亡年など,さまざまな試料の年代は
どうやって測定されるのか.ここでは,年代測定研究の現状や成果を分かり易く解説し,
年代測定の研究者を目指す,年代測定を利用する可能性のある,あるいは年代測定に興味
を持つ学生に年代学の基礎知識を提供する.
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●履修条件あるいは関連する科目等
将来,地質学や環境科学分野の研究,考古資料や文化財の理化学的研究に携わること,あ
るいは調査員や学芸員などを目指す人にとって役に立つ内容である.また,年代測定に興
味を持つ学生の受講を歓迎する.
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●授業内容
ここで取り扱うのは,地球の形成から現在に至る全地球史に関わる年代測定である.
特に,日本最古の岩石の年代測定に利用されるウラン−トリウム−鉛法(CHIME法)
と,最終氷期から現在の温暖期にかけての環境変動と人類の発展に関する年代測定に用い
られる放射性炭素法の原理やさまざまな研究への応用を解説する.また,その他の様々な
年代測定法と,それを利用した地球環境変動の解析研究を紹介する.さらに,センター所
有の日本には数台しかない加速器質量分析年代測定装置及びCHIME年代測定装置の見
学を実施する.講義予定は以下の通りである.
1.年代測定の概要(中村俊夫)
2.人類紀の年代測定(中村俊夫)
14C年代測定法,年輪年代測定法,TL年代測定法,その他の方法の原理と応用
3.地球史の年代測定(1)(鈴木和博)
CHIME年代測定法,カリウム−アルゴン法,その他の方法の原理と応用
4.地球史の年代測定(2)(南 雅代)
表面電離型質量分析計を用いた年代測定法,ルビジウム−ストロンチウム法,ウラ
ン−鉛法など,ICP質量分析計を用いた年代測定法の原理と応用
5.地球の進化と年代(南 雅代)
6.人類の進化と年代(中村俊夫)
7.地球物質循環と年代(鈴木和博)
8.犯罪の科学捜査と年代測定(中村俊夫)
9.加速器質量分析年代測定装置及びCHIME年代測定装置の見学
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●成績評価の方法
出席,講義中の小テスト,レポート提出あるいは小テストによる.
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●教科書
特に指定しない.必要に応じ,資料を配付する.
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●参考書
兼同一郎(著)年代測定学概論.東京大学出版会
長友恒人(編)考古学のための年代測定学入門.古今書院
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●注意事項
特になし.
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