●本授業の目的およびねらい
セミナーのテーマ:「光」について考える 我々が当たり前だと思っている現象をより深く考察してその根本原理を見極め、更なる発展や予言に繋げることは物理学の醍醐味と言ってよいと思います。このセミナーではファインマンの有名な講演録「光と物質のふしぎな理論」をテキストとして、光の反射、屈折、干渉といった当たり前の現象が根本的原理(量子電磁力学)に従ってどう理解されるか、そこから得られた発展や、今後に残された課題を見てゆきます。また、量子力学の根幹をなす光の波動性と粒子性の二重性の特徴をより深く理解することを目指します。
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●履修条件あるいは関連する科目等
特にありません。課題に積極的に取り組み議論に参加できる人を歓迎します。講演録は一般聴衆向けのものであり、数式よりも直感的な理解や概念の把握に主眼がありますので、数学的な予備知識も必要ありません。
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●授業内容
セミナーは以下のように進める予定です(ただし、参加者と話し合いながら変更する可能性があります)。テキストは一般聴衆に向けて行われた講演を加筆修正したもので4章に分かれています。2人1組で6組を作ってセミナーを進めます。 第1回:簡単な実験 初回は、スライドガラスを使って二重スリットを作り、レーザーポインターを光源として干渉縞を観察、結果を考察します。この光源が1光子になった時に何が起こるか?がこのセミナーを通して理解すべきことの一つになります。 第2−8回:テキスト第1−3章の精読 テキスト第1−3章に書かれている内容を6組が分担してできるだけ丁寧に報告してもらい全員で議論することによって、皆さんがよく知っている光の反射、屈折が量子電磁力学でどのように捉えられるのかを理解してゆきます。「へぇーっ」と思うような発見があるかもしれません。また、できるだけ早い回に、文献の調べ方や、プレゼンテーション、グループでの情報共有の手法についても学びます。 第9−14回:文献調査課題のプレゼンテーション 発展的内容を含むテキストの第4章や参考書(以下参照)、もしくは関連する話題について自ら調べてきた内容を自由に発表してもらい議論してゆきます。また、テキストに書かれている1光子による干渉を確かめる実験を考案してみるのもよいと思います。 第15回:反省会 このセミナーで得られた発見や疑問に思ったことを各自が自由に発表します。
時間が許せば、名古屋大学で行なわれている素粒子実験の紹介や研究室の見学なども取り入れてゆく予定です。
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●成績評価の方法
出席、発表内容、討論への積極性、レポート(各25%)により評価します。学期途中で履修の意思がなくなった場合,履修取り下げ届を提出する必要があります。
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●教科書
「光と物質のふしぎな理論 – 私の量子電磁力学 −」,R. P. ファインマン(釜江常好・大貫昌子訳),岩波現代文庫,ISBN978-4-00-600177-3
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●参考書
■「量子力学への招待」,外村彰,岩波講座 物理の世界 量子力学〈1〉,ISBN4-00-011109-4 ■「鏡の中の物理学」,朝永振一郎,講談社学術文庫,ISBN-978-4-06-158031-2
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●注意事項
発表資料やレポート作成時に本やウェブページを参考にした場合は情報元を示して下さい。
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●本授業に関する参照Webページ
http://www.hepl.phys.nagoya-u.ac.jp/~iijima.nagoya/ToruIijima/nuilas_kisoseminar.html
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●担当者からの言葉(Webページのみ表示)
「光」は物理現象だけでなく、化学現象、光合成のような生命現象など、あらゆる自然現象に重要な役割を担っています。皆さんが慣れ親しんできた光の反射や屈折も光合成も光と物質の相互作用の結果であり、この相互作用の根本原理は「量子電磁力学」で記述されています。このセミナーで使用するテキストは、米国の著名な物理学者ファインマン(1965年ノーベル物理学賞受賞)が量子電磁力学を一般向けに解説した名講演として知られていますが、その内容には物理研究者にとっても「目からうろが落ちる」ような発見があり、光の現象に対する認識を新たにされる記述が多くあります。このテキストを読み込んでいく中で、「へーっ」というような驚きを皆さんと共有したいと思っています。また、セミナーで学んだことが、後に皆さんが量子電磁力学を本格的に学ぶ時に役に立つのではないかと思います。 皆さんが積極的に議論に参加してくれることを期待しています。「ばかなことではないか?」と思うことでも恥ずかしがらずに質問し意見を述べてください。そうした姿勢を身につけることも本セミナーのねらいです。
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