●本授業の目的およびねらい
複素関数は、自然科学の様々な箇所に現れ、基本的役割を果たすと共に幅広い応用を持っている。特に、その微分積分学は、実数のそれと全く異なった美しく統一的な世界を形作っている。本科目はこうした複素関数の微分積分学の基礎、特に複素解析関数(正則関数ともよばれる)の基本的性質を学び、応用上重要な、その様々な取り扱いに習熟することを目的とする。 特に、ベキ級数および複素積分の取り扱いを重視する。
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●履修条件あるいは関連する科目等
微分積分学I、微分積分学IIの内容を既知とする。
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●授業内容
以下の授業内容は標準的に教えられるものであり、講義の順序を示すものではない。 また、クラスによっては、さらに進んだ内容や自然科学への応用例などが教えられる場合もある。
1 複素数平面:複素数の幾何学的表示を理解し、基本的な演算に習熟する。 (キーワード)絶対値、偏角と主値、オイラーの公式、1のn乗根
2 複素関数の正則性:正則性の定義とコーシー・リーマンの定理を学ぶ。 (キーワード)コーシー・リーマンの定理
3 初等関数と逆関数:指数関数などの初等関数の正則性や基本性質を学び、逆関数の正則性、多価性について理解する。 (キーワード)初等関数、逆関数の正則性、多価性と分枝
4 複素線積分とコーシーの積分定理:複素線積分を学び、コーシーの定理を理解する。 さらに、定理の応用を学ぶ。 (キーワード)複素線積分、コーシーの定理、コーシーの積分公式
5 ベキ級数展開:ベキ級数の正則性と、正則関数のベキ級数展開と解析接続を学ぶ。 (キーワード)ベキ級数の収束半径、正則関数のベキ級数展開 (発展的内容)零点の位数
6 留数定理とその応用:孤立特異点における留数と、複素線積分の計算や実積分への応用を学ぶ。また、孤立特異点のまわりにおけるローラン展開と特異点の分類にも触れる。 (キーワード)孤立特異点、ローラン展開、留数定理、実積分への応用
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●成績評価の方法
中間・期末試験の成績にレポートの結果を加算して判断する. また、履修取り下げ制度を採用するが、詳細については初回の講義で説明する.
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●教科書
「複素関数論」岸正倫・藤本担孝、学術図書
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●参考書
「複素関数入門」神保道夫著、岩波書店 「複素解析」アールフォルス著、現代数学社
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●注意事項
教科書を使って予習復習ができる形で講義するが順序については変更することがある.
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●本授業に関する参照Webページ
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●担当者からの言葉(Webページのみ表示)
複素関数論は、理論的に見ても大変美しい、解析学の王道、といった雰囲気のある学問体系ですが、同時に理学、工学その他科学技術全般への応用が極めて幅広く、今日の産業社会を支える学問的支柱のひとつでもあります。大学の理科系学部でマスターすべき、もっとも重要な科目のひとつだと思いますので、しっかり勉強してください。
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