学部・大学院区分学部
時間割コード0023301
科目区分文系教養科目
科目名 【日本語】生と死の人間学
科目名 【英語】Human Life and Death
主担当教員 【日本語】岩﨑 陽一
主担当教員 【英語】IWASAKI Yoichi
単位数2
開講期・開講時間帯Ⅱ 水曜日 3時限


本授業の目的およびねらい
本授業科目は,人文・社会科学系分野の諸現象について,それらの諸現象を学際的,総合的に分析,把握する能力を育むとともに,他の学問分野との関連性について理解することが目的である。
 具体的には、人類の歴史において「生」と「死」が意味してきたこと──それらの価値、魅力、脅威など──の総合的な理解をめざす。
 この授業を通して、上記の事象を文献にもとづいて理解し、自らの生および死と関連付けて考察する能力を身につける。
授業の構成
 以下に示す主題について、基本的には古今東西のさまざまな思想・捉え方を紹介するような授業進行になるが、この授業が目指すのは、ひとが考えたことを知ることではなく、自分の考えを形成することにある。したがって、随時、私たち(教員と授業参加者のみなさん)にとって現実味のある「問い」に話題を引き寄せ、考える機会を設ける。初回の授業で、生と死に関する「問い」を提出してもらうので、考えておいてもらいたい。差し当たって、担当教員の関心が高い「死ぬ方が明らかに幸福なときになぜ死をためらうのか」という問いをひとつの軸に設定する。考察の方法は、基本的に哲学・倫理学の手法を用いる。なお、下記の諸主題は都合により変更する場合がある。

1. 生と死の捉え方の諸相(宗教、生理学、哲学等)
2. 個(魂、身体、意識)
3. 生と死の折り重なるところ(脳死、幽霊、不死、胎児等)
4. 死は善か悪か(殺人、戦争、死刑、自殺、極楽往生等)
履修条件・関連する科目
履修条件は要さない。
成績評価の方法と基準
適宜、授業内容に関するコメントの提出を求めるほか、期末レポート課す。評価配分はコメント50%、レポート50%とする。コメントの提出率が半分を下回るか、期末レポートが提出されない場合は「欠席」とするので、履修取下げの際には届を必要としない。
教科書・テキスト
教科書は指定しない。適宜、資料を(主に電子データで)配布する。
参考書
Ben Bradley, Fred Feldman, and Jens Johansson, eds. The Oxford Handbook of Philosophy of Death. New York: Oxford University Press, 2013.
注意事項
授業の内容は自分の頭でよく考えることを要求するので、授業時間内で完全に理解することは難しいだろう。授業後、ノート整理などを通して、反復的に考察し理解を深める必要がある。
本授業に関する参照Webページ
担当教員からのメッセージ
This course is one of the courses that provide students with the skills required to analyze and understand phenomena in the humanities and social sciences in an interdisciplinary, comprehensive fashion, promoting an understanding of their relationships to other fields of study. This course focuses on the meanings of life and death in the history of human thought.

「死にたい奴から前に出ろ」と言ったのは、たしか『北斗の拳』か『魁!男塾』の登場人物だったと思う。悪役が手始めにひとり善玉を血祭りに上げ、そのうえで、「俺と闘うとこうやって死ぬことになるが、それでも俺と闘いたい奴は出てこい」と募るのがこのセリフである。しかし誰もこの募集に応じない。ケンシロウの生きる世界も、また男塾塾長江田島平八の支配する世界も、生はきわめて困難で苦しく、死んだ方がましに思える。それでもなお、登場人物たちは生にしがみつく。なぜか。
 この授業は、生と死について考えるために、上記の問い、すなわち「死ぬ方が幸福なときになぜ死をためらうのか」をひとつの手がかりとして検討を行う。いわゆる「死生学(thanatology, death studies)」の対象領域を多く扱うことになる。しかし、医療倫理や生命倫理に重きを置く我が国の標準的な死生学の授業と異なり、この授業は「死の哲学」と呼ばれるような、哲学的、とくに形而上学的、宗教哲学的、或いは倫理学的な話題が中心となる。担当者はインド哲学の教員なので、インドや仏教の話が多くなるだろう。