●本授業の目的およびねらい
「線形性」は近代科学における数量的取り扱いの最も基本的な概念であり,さまざまな分野で用いられる。その線形性を数学的に扱う手法を与えるのが線形代数学である。本科目は通年講義の前半として,行列の数学的取り扱いに習熟し,諸概念を理解することを目的とする。特に,座標幾何学(平面,空間)による幾何学的理解,連立一次方程式の解法への習熟,行列式の概念の理解を重視する。
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●履修条件あるいは関連する科目等
高校数学の内容を既知とする。線形代数学IIとあわせて完結した講義となる。
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●授業内容
以下の授業内容は標準的に教えられるものであり,講義の順序を示すものではない。実際の講義予定 は別に提示する。 1.空間図形(空間内の平面と直線) 空間内の基本的な図形である直線,平面の方程式や方向ベクトル,法線ベクトルなどを通して,方 程式に対する幾何的感覚を養う。 (キーワード)直線の方程式,平面の方程式,方向ベクトル,法線ベクトル,内積 (発展的内容)外積,空間ベクトルに対する線形結合,線形独立・従属,球面の方程式 2.行列 行列の基礎概念を理解し,その演算法則に習熟する。 (キーワード)行列の演算,単位行列,正則行列,逆行列,対角行列,転置行列 (発展的内容)三角行列,行列の分割,実対称行列,直交行列 3.行列の基本変形と連立一次方程式 行列の基本変形により階数の概念を理解し,連立一次方程式の掃き出し法による解法との関係を理 解する。また,正則行列の判定と逆行列の計算法にも習熟する。 (キーワード)連立一次方程式,基本変形,拡大係数行列,行列の階数,解の自由度,逆行列の計算 4.行列式 行列式の基本性質,幾何的意味を理解し,行列式の計算に習熟する。また,行列の正則性と行列式 の関係などについて学ぶ。 (キーワード)行列式の基本性質,行列式の展開,余因子 (発展的内容)置換,クラメールの公式,余因子行列と逆行列,平行6面体の体積
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●成績評価の方法
期末試験(100点満点)が60点以上を合格とする.
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●教科書
「工学系;線形代数(新訂版)」筧 三郎(数理工学社) ただし講義の進行は教科書とは異なる.他に適した教科書があれば新規に購入せずともよい.
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●参考書
「線形代数」「線型代数」「Linear Algebra」をキーワードとして検索すれば有用なサイトが多数あり,練習問題も見つけられる.
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●注意事項
授業時間が限られているので,自宅での予習・復習・演習が不可欠である.
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●本授業に関する参照Webページ
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●担当者からの言葉(Webページのみ表示)
本科目の内容は理系文系かかわらず様々な分野で広く用いられるため必須であり,かつては高等学校でも一部教えられてきた.特に行列の演算に関する問題は名大入試の数学では定番のひとつだった.ところがなぜか新課程では高校の数学から削減されてしまい,2015年度入学生諸君からは(もちろん2019年度入学生諸君にとっても)新しい内容となった.ここでつまずくと先々の科目で非常に困るのでしっかり習得してほしい.
なお,講義の順番や説明の方法は教科書とは異なる.また線形代数1についてはすべての講義で共通であることが建前であるためシラバスは共通だが,実際の講義内容は異なる面もある.
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