●本授業の目的およびねらい
2001年3月、バーミヤーン(アフガニスタン)にある仏教遺跡の大仏2体がターリバーンによって破壊されたことは、当時の映像などを通じてご存知の方も多いでしょう。 人類は、美術作品を美術館に収蔵して大切に保存しようとする一方で、この事件などに代表されるように、美術作品を大量に破壊してきました。 なぜ人間は美術作品を破壊するのでしょうか。 本授業では、この問いについて様々な角度から考え、人間と美術の関係をめぐる知られざる世界へと皆さんを案内したいと思います。
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●履修条件あるいは関連する科目等
履修条件は下記の通りです。 ①世界史の基礎知識を持っていること ②美術や文化に興味があること
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●授業内容
本授業では下記のような内容やテーマを扱う予定です。 ・死者の分身としての美術 ・聖遺物 ・ロウ人形 ・イメージを殺す? ・生命とは何か ・ビザンティン帝国とイコンをめぐる論争 ・中世ヨーロッパにおける偶像崇拝 ・宗教改革と宗教美術の破壊 ・フランス革命と美術の破壊 ・ナチズムと「頽廃芸術」 ・共産主義支配終結後の美術の破壊 ・現代美術と破壊 ・美術の保存修復と破壊の微妙な関係 ・科学における美術の使用 ・聖像衝突 ・ピグマリオンの伝説 ・仏像 ・政治的運動と美術の破壊 ・美術の複製 ・イスラーム
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●成績評価の方法
以下の2つの方法を組み合わせて成績評価を行います。 ①毎回の授業時に提出してもらうリアクションペーパー ②期末レポート
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●教科書
ありません
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●参考書
ヴィクトル・I・ストイキツァ著『絵画をいかに味わうか』(平凡社)、ブリュノ・ラトゥール著『近代の〈物神事実〉崇拝について―ならびに「聖像衝突」』(以文社)
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●注意事項
ありません
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●本授業に関する参照Webページ
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●担当者からの言葉(Webページのみ表示)
いろいろな時代や地域において、人間は美術と深い関わりを持ってきました。 私たちは美術作品を貴重な財産として大切に保存し、時間をかけて熱心に鑑賞し、愛好しています。 時に驚くような高価で売買されたりもします。 その一方で多くの作品が破壊され、隠匿されたり、朽ちていくままにされたりしています。 後者のようなネガティブな側面については、専門家によって正面から取り上げられることはあまりありません。 美術を破壊するような人々は、芸術の価値を理解できない無知蒙昧な人々なのでしょうか。 私にはそうは思えません。 では彼らはどのような理由からそうするのでしょうか。 この問題を深く掘り下げていくと、これまで見えなかったつながりや背景が浮かび上がってきます。
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