●本授業の目的およびねらい
私たちは自らが「こう生きたい」と望む善き生を構想し、それを実現しようとするが、そのためには安全、食料、収入、教育、医療、承認といった資源 を必要とする。そうした資源は希少であり、また不平等に配分されてきた。本講義では、私たちが善く生きるために必要な資源を創出、拡大し、またより平等に 配分するための闘争的実践を「開発」と捉え、主に政治学の視点から、その課題を検討する。その際、現地の人びとのリアリティに寄り添いながら、途上国の経験を理解する。また、そこから学んだ知見に基づき、「共同性」を鍵概念に、今日の日本社会が直面している課題を打開する方途も模索する。
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●履修条件あるいは関連する科目等
特になし
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●授業内容
第1回 イントロダクション──私たちの生をより「豊か」にするために
<第1部>フィリピンの国民国家形成から学ぶ──痛恨の植民地支配と解放の希求 第2回 スペイン期──抵抗運動の中から生まれた「フィリピン人」 第3回 アメリカ期──「白人の愛」から生を取り戻す 第4回 日本期──「トモダチ」の圧政と引き裂かれた住民
<第2部>フィリピン政治の挑戦から学ぶ──格差社会における民主主義の挑戦 第5回 ピープルパワー革命──戦車と機関銃に立ち向かった丸腰の人びと 第6回 エリート支配の民主主義──裏切られた民主化 第7回 市民社会の挑戦──国家に頼らず立ち上がり、支え合う人びと 第8回 階層社会の民主主義──不平等が蝕む国民の共同性 第9回 法治主義と貧困層の軋轢──露天商と不法占拠者の経験から
<第3部>フィリピンから共同性を学ぶ──道徳を越えた人と人の繋がり 第10回 境界線を越える在日フィリピン人──「癒し」の共同性 第11回 国際ワークキャンプのビデオ上映 第12回 国際学生ボランティア論──素人の学生だからできること 第13回 NGOゲスト講師 第14回 フィリピン・ナショナリズム論──共感・共苦の共同性 第15回 期末レポート
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●成績評価の方法
出席30%、レポート70%(レポートでは記憶力や要約力ではなく、独創的な思考を説得的に論述する論理展開力を評価)履修取り下げ制度を採用する。
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●教科書
適宜、指定する。
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●参考書
『フィリピンを知るための64章』大野拓司・鈴木伸隆・日下渉編、明石書店、2016年。
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●注意事項
特になし
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●本授業に関する参照Webページ
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●担当者からの言葉(Webページのみ表示)
私は、大学生時代にボランティア活動を通じてフィリピンの人びとの優しさに感激し、フィリピンを大好きになりました。これまでは、文化人類学的なフィールドワークを通じて理解した現地の人びとのミクロな視点から、民主主義や貧困といったマクロな問題について考えてきました。現地の社会で暮らす人びとをよく知らないまま、「国際開発」を議論したり、実践したりするのは危険です。「善く生きる」ということについて、フィリピンの人びとのリアリティに触れながら、「私たち」自身の問題としても考えを深めていきたいです。
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