●本授業の目的およびねらい
1)「教養」とは、個人的な体験を個人的なものにしない〈人間力〉をいう。それは優れた古典文学を読んで、古人と感を同じくする体験を積み重ねることによってもたらされる。 2)外圧的になされた日本の近代化を見直すためには、直近の過去である江戸時代のことを知るのが望ましい。そのためには優れた文学に拠るのが近道である。 3)そこで江戸時代前期の文豪、井原西鶴の書簡体小説『万の文反古』を読む。
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●履修条件あるいは関連する科目等
原本の写真版によって読み進めるので、唯一の履修条件は、古文献読解に対する意欲があること。もちろん今は一文字だに読めなくともかまわない。古文が苦手でもかまわない。関連する科目は文学、歴史関係の全般。
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●授業内容
1)西鶴の小説作品は全てが出版物とするために執筆された。当時の版本は文字が大きく、1頁あたりに収められる文字数が少なかった。つまり、1文字あたりの経費が高く、作家は文字数を費やす描写が出来なかった。 2)そのために西鶴は、文字数の制限の中、主に省略と暗示という高度な技法を駆使して、日本文学に新たな世界を開拓した。 3)『万の文反古』は日本文学史上、ほとんど唯一の純粋な書簡体小説で、1通の手紙のみで1章を成している。つまり省略と暗示に満ちており、西鶴の名人芸をうかがうのに最もふさわしい。 4)当時の社会の基本的な制度や人々の世界観、意思伝達の手段としての手紙の意義と歴史、昔の文献を読む際の留意点、西鶴の実人生、について考えつつ、短編集『万の文反古』を精読する。
授業のおおよそのスケジュールは以下の通り。 1.全体的なガイダンス 2~5.巻1の1「世帯の大事は正月仕舞」。 6~10.巻1の3「百三十里の所を拾匁の無心」。 11~15.巻2の3「京にも思ふやう成事なし」。
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●成績評価の方法
1)授業参加時の積極性(出席点を含む)が50パーセント、2)くずし字読解能力と西鶴を読解する能力、それを表現する力を問う期末テスト(ペーパーテスト)が50パーセント。なお、期末テストを受験しなかった者は「欠席」とする。
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●教科書
プリントを使用する。
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●参考書
以下を買って読みなさい。1)宮本常一『忘れられた日本人』、2)南方熊楠『十二支考』、3)内田百間『冥途・旅順入城式』、4)中田薫『徳川時代の文学に見えたる私法』、5)『サキ傑作集』、6)金関丈夫『木馬と石牛』、7)柳田国男『木綿以前の事』、8)青木正児『華国風味』(以上、いずれも岩波文庫)。
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●注意事項
いわゆる先進国の中で、わずか百数十年前の自国の普通の文献を、国民の多くが読めなくなっている国は日本だけだ。何と恥ずかしいことではないか。専攻をとわず、くずし字を読解する能力を身につけることが望ましい。読書の幅がぐっと広がるはずだ。
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●本授業に関する参照Webページ
http://iwasebunko.jp/
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●担当者からの言葉(Webページのみ表示)
「日本初の古書ミュージアム」西尾市岩瀬文庫を訪ね、日本の豊かな書物文化について体感して欲しい。さらに、大垣市奥の細道むすびの地記念館を訪ね、昔の文学を読み、古人の人生に触れるとはどういうことなのかを、展示を見ながら、芭蕉さんとともに、じっくりと考えて欲しい。 ※岩瀬文庫のホームページから公開している古典籍書誌データベースも、随時参照して欲しい。
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