●本授業の目的およびねらい
存在、認識、真理といった哲学の基礎的な諸概念への導入を図る。ただし、担当者がインド哲学の教員ということもあり、哲学の世界へ仏教を通して入門してもらう。そのように哲学を相対化した方が、より深く問題を理解できるだろうと考えてのことである。インド的・仏教的特質を明らかにしながら仏教哲学を学び、普遍的な知的営みとしての哲学を実践する。到達目標は、哲学的問題について自らの知性で考え、意見をもつことである。同時に、本講義はひとつの「仏教哲学概論」でもあり、インド仏教と日本仏教の歴史や基本的理論を学んで知識として身につけることも目指す。
|
●履修条件あるいは関連する科目等
とくになし。英語の教科書を用いるので、或る程度の英語力が必要になる。
|
●授業内容
以下の流れを予定しているが、受講者の関心に応じて、少し内容を変更する可能性がある。仏教の宗教的側面にはなるべく立ち入らず、倫理的・哲学的議論を中心的にとりあげる。 (1)幸せになればなるほど不幸せ──四諦と輪廻、カルマ理論 (2)天上天下瑜伽独尊──仏陀の生涯と仏教の歴史 (3)心と身体の他に自我などない──無我説 (4)無我の世界における自業自得──仏教倫理(1) (5)愛することは罪──仏教倫理(2) (6)刹那滅する物体──存在論と形而上学 (7)刹那滅する意識──心の哲学 (8)卵と鶏、どっちも先じゃない──空 (9)真実を覆い隠すものとしての言葉──認識論 (10)経験がものをいう──形式論理学 (11)これはこれでないものではありません──言語哲学 (12)神のいない宗教──宗教哲学 (13)石ころだって解脱できる──東アジアのエクストリーム大乗仏教 (14)助けてもらおう──親鸞の絶対悪 (15)禅とSATORI──道元の絶対善
|
●成績評価の方法
出席率、授業参加の積極性、筆記試験により評価する。 学期途中で履修の意思がなくなった場合,履修取り下げ届を提出する必要がある
|
●教科書
Mark Siderits. Buddhism as Philosophy: An Introduction. Hackett (米) or Ashgate (英), 2007.
|
●参考書
鈴木生郎・秋葉剛史・谷川卓・倉田剛『ワードマップ現代形而上学: 分析哲学が問う、人・因果・存在の謎』新曜社,2014年。
|
●注意事項
教科書は、日本語ではよいものがないので、洋書を用いる。2000円台で購入できるはずである。通読しなくても試験はパスできるが、英語力の強化のためにも、努力して読んでみよう。なお、講義はすべて日本語で実施する。
|
●本授業に関する参照Webページ
|
●担当者からの言葉(Webページのみ表示)
大学生になったら、なるべく多彩な領域を勉強してみよう。仏教哲学なんて、当然、勉強するつもりなかっただろう。だからこそ、たまたまこの授業が開かれているのをラッキー(仏縁)と思って、面白半分でいいから受講してみて、自分の視野をひろげ、発想力をゆたかにしてもらいたい。この授業が受講者に約束するのは、これまで考えたことのないことを考えるという知的経験である。その経験の積み重ねが、ひとの知性を鍛えていく。授業での学びを最大限に高める秘訣は、授業で扱う問題を、自分でも真剣に考えてみること。たとえば、過去や未来の自分と今の自分の同一性を保証する「自我」或いは「霊魂」なるものはほんとうに存在するのか、それが存在しないならば昨日の自分と今の自分はどういう関係でつながっているのか、という問題を真面目に考えてみよう。この授業では、自我の存在について昔のひとが何を考えたかを教えるのではなく、自我の存在についてどう考えたらいいのか、そのノウハウを手ほどきする。
|