●本授業の目的およびねらい
セミナーのテーマ:宗教・哲学・宗教哲学 神に祈りを捧げるのは宗教だけれど、なぜ祈りを捧げるべきかを論証するのは哲学。歴史的にみて、宗教は哲学の力を借りて発展し、また哲学は宗教を大きな栄養源にして進化してきた。多文化共生社会に生きるとき、宗教の理解は重要な課題であるが、この授業では宗教と哲学の交錯点に立ってその両方に視野を広げ、宗教的問題を哲学的に検討する、いわゆる「宗教哲学」の実践を通して、哲学的論点に注目して宗教を考えたい。発表や議論を重視し、抽象的な問題を論理的に考える強靱な思考力と、意見の違う他者の論理を認める想像力を養うことを目的とする。
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●履修条件あるいは関連する科目等
哲学や宗教に関する科目を併せて履修することが望ましい。
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●授業内容
授業では、まず、論理学の初歩的な手ほどきをして、フェアな議論を行うための下地を形成する。そのうえで、いくつかの宗教的問題についてさまざまな見解を学び、それらを批判的に検討する。扱うテーマは(1)神の存在と性質、(2)聖典の権威、(3)善悪の根拠、(4)死後の世界の存在、(5)自我の存在、を予定している。参加者はいずれかのテーマを選び、それに関する資料(教員が紹介する)を読んで自らの見解を整理して口頭発表し、それについて参加者全員で討議する。授業の最終回では、これらの問題に関する理解を確認する試験を行う。 なお、担当者はインド哲学の教員であり、仏教やインド哲学の立場から意見を述べる。各参加者も西洋哲学やキリスト教に視点を絞る必要はなく、中国哲学、日本哲学、イスラーム哲学等を導入してもよい。
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●成績評価の方法
出席率、議論参加の積極性、発表内容、試験により評価する。 学期途中で履修の意思がなくなった場合,履修取り下げ届を提出する必要がある
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●教科書
上枝美典『「神」という謎―宗教哲学入門』世界思想社(ISBN: 978-4790712534)をしばしば参照するが、現在品切れのため、必要箇所はプリントとして配布する。
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●参考書
随時紹介する。高校で使用した倫理の教科書・資料は参照できるようにしておくこと。
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●注意事項
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●本授業に関する参照Webページ
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●担当者からの言葉(Webページのみ表示)
神は存在するのか? 死後の世界は存在するのか? この授業では、そういった問題に大まじめに正面から取り組む。履修者それぞれの信仰は関係ない。神は存在するかどうかを、履修者ひとりひとりが哲学者になって、客観性・論理性を最大限高める仕方で検討する。おそらく、われわれがどんなに議論を尽くしても、神が存在するかどうかの結論を授業中に出すのは難しいだろう。しかし、議論の果てに、こういった宗教的テーマの孕む論理的な問題点が見えてくるに違いない。それが見えてくるまで、この授業では、議論を放棄せずに続けていく。そもそも、この授業が目指すのは、神学的問題に答えを出すことではない。答えの出ない議論を徹底的に詰めていくことにより、それぞれの信仰・先入観・誤謬を削ぎ落とし、論理性を研ぎ澄ます。そのようなトレーニングが、この授業の目的である。 同時に、宗教とは何か、哲学とは何かということについて考えていきたい。無神論大国であるこの国では、「宗教キモい」という見解が広まっているが、頭ごなしに信仰を否定するその見解も、哲学的には、カルト宗教と同じくらい説得力がない。哲学的にものを考えるとき、宗教的問題について何が言えるのか、何を言うべきなのか、それを探求してみよう。 履修者は、無神論者も、信仰をもつひとも大歓迎である。宗教に関心のある学生の方が楽しめるだろうが、宗教に関する前提知識は必要としない。
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