●本授業の目的およびねらい
定量的変化を記述・分析する数学の分野が解析学であり,その中心的方法は微分・積分である.これらの方法は自然科学において必須の研究手法であるが,近年はさらに社会科学などにも広く応用されている.本科目は通年講義の後半として,多変数微分積分学の基本を理解し,様々の計算に習熟して応用できるようになることを目的とする.特に多変数関数のグラフなどを通して幾何学(空間)的イメージ,線形代数と結び付いた理解を重視する.
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●履修条件あるいは関連する科目等
高校数学,微分積分学Iの内容を既知とする.微分積分学Iとあわせて完結した講義となる.
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●授業内容
以下の授業内容は標準的に教えられるものであり,講義の順序を示すものではない.また,クラスによっては,さらに進んだ内容が教えられる場合もある.実際の講義予定は別に提示する.
1.多変数関数の極限と連続性 多変数関数(特に2変数関数)の極限に関する基本的事項と連続関数の基本性質を学ぶ. (キーワード)ユークリッド距離,点列の極限,多変数関数の極限と連続性 (発展的内容)近傍,開集合,閉集合,連続関数の性質
2.多変数関数の微分法 多変数関数(特に2変数関数)について微分法の基礎を理解する.さらにそれを用いて,平面上の関数の様々な性質について調べられるようにし,極値問題などへの応用を学ぶ. (キーワード)偏微分と方向微分,合成関数の偏微分,テイラーの定理,高階偏導関数,極値問題 (発展的内容)全微分,接平面の方程式,座標変換,勾配ベクトル,二次形式としてのヘシアン,陰関数定理,ラグランジュの未定乗数法,多変数関数
3.多変数関数の積分法 重積分の意味を理解し,累次積分による積分計算に習熟する.さらに,極座標変換などの例を通して,変数変換とその重積分への応用を学ぶ. (キーワード)重積分,累次積分,変数変換,ヤコビアン (発展的内容)積分順序交換,曲面積と体積,(多変数)広義積分,線積分,グリーンの定理
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●成績評価の方法
定期試験,中間テストの評価に加え、講義時間において行った演習等の結果を考慮して成績評価を行います. 履修取り下げ制度を採用します.
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●教科書
南 和彦著,微分積分講義,裳華房
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●参考書
杉浦光夫著,解析入門I・II,東京大学出版会 高木貞治著,解析概論,岩波書店
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●注意事項
授業時間が限られているので、自宅で講義を復習することと演習問題を自発的に解くことが不可欠です.そのために講義に出席し、板書される講義内容を必ずノートをとることを強く望みます.
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●本授業に関する参照Webページ
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●担当者からの言葉(Webページのみ表示)
教えられる範囲が決まり難易度も整えられている高校までの数学とは異なり、 大学で学ぶ数学は厳密で抽象的な学問になります.また将来必要となる高度な知識の理論的基礎となる内容も含んでおり、初めは難しく感じたり戸惑ったりするかも知れません.しかし難解なものや理解するためにに努力が必要なものにこそ、勉強すべき内容が含まれているのです.難しいからといって勉強を諦めるのではなく、考えて考えて考え抜くという態度を身につけて、是非数学の本当の面白さや大切さを見つけ出してください.
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