●本授業の目的およびねらい
憲法というのは身近なようでいて、なかなかピンとこない存在かもしれない。 戦後日本政治の大きな論争点となってきたとはいえ、そこで交わされている議 論は、憲法学のイロハもふまえていないものがあまりに多い。シロート談義大 いに結構。ただし、憲法問題は日本の行方を左右するものだけに、立憲主義の 歴史と基礎理念を理解した上でないと100年の計を誤ることになろう。この 講義は法学部の専門科目であるが、学部を問わず一市民として憲法問題を論ず るための基礎をも提供する趣旨で、開放科目としている。
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●履修条件あるいは関連する科目等
履修条件は特になし(法学的前提知識は不要である)。関連科目としては、全 学教育科目の「日本国憲法」、法学部の「憲法2(人権・憲法訴訟)」および 「比較国制論」がある。
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●授業内容
上記の「目的およびねらい」で述べた視点を培うために、総論として、近代憲 法の歴史と基本原理、国民主権の理論と解釈、平和主義の歴史と現在などをと りあげ、各論として統治機構の憲法論を扱う。 講義のねらい目は、現実社会におけるホットな憲法問題をキャッチする鋭敏な 感性と、それを高度な解釈論で読み解くクールな論理的思考力を養うことであ る。したがって、通例の体系書にならい、日本国憲法の解釈論上の基本問題に 重点をおいて講義するが、その際、憲法判例はもちろんのこと、憲法の歴史や 諸外国の理論、現実の日本社会がかかえるアクチュアルな憲法問題などにも、 可能なかぎり言及したい。
[講義の概要] 1 近代憲法と現代憲法 2 日本国憲法の成立 3 天皇制度 4 軍事によらない平和 5 統治機構:国会・内閣・司法・財政・地方自治
[入門書] 森英樹著 『国際協力と平和を考える50話』岩波ジュニア新書 愛敬浩二著 『改憲問題』ちくま新書 浦部法穂著 『世界史の中の憲法』共栄書房
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●成績評価の方法
基本的に、学期末試験(論述式)の成績による。
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●教科書
浦部法穂・大久保史郎・森英樹著『現代憲法講義1〔講義編〕〔第3版〕』 法律文化社
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●参考書
判例集:野中俊彦・江橋崇編著『憲法判例集〔第10版〕』有斐閣新書
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●注意事項
幸か不幸か、日本社会は憲法問題の「宝庫」である。マスコミで報道され、 または身近に見え隠れしている憲法問題に関心をもちつつ講義にのぞむことを 期待する(ネットやテレビのニュースだけでなく、新聞を読んでほしい)。
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