●本授業の目的およびねらい
比較的近年に至るまで、科学技術の研究はもっぱら男性によって担われてきた。科学技術が価値中立的なものであるなら、担い手のジェンダーは問題にはならないだろう。しかし、科学技術は必ずしも価値中立的(バリュー・フリー)ではなく、したがってジェンダー・フリーでもない。科学がジェンダーと深いかかわりをもって成立してきた歴史的事例を学び、欧米で進められてきた科学技術に関する女性政策のめざましい進展を知ってもらいたい。そしてようやく動きが出てきたわが国の現状をたどりながら、男女共同参画社会にふさわしい科学技術のあり方を探ろう。
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●履修条件あるいは関連する科目等
関連する科目としては、全学教養科目の「科学・技術の倫理」「科学技術史」「科学技術社会論」
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●授業内容
* 最初に科学的認識とはどのようなものであるかを体験的に理解してもらう。それを通して、科学技術を客観的で価値中立的なものとする見方に揺さぶりをかけることとする。固定観念を崩したところで、科学の歴史を新しい目で見直してみよう。 * 授業は大きく分けて「知識の問題」と「人の問題」に整理しうる。前者は科学知識あるいは技術の使われ方にいかにジェンダーが深く関わっているかを明らかにするものであり、後者はなぜ歴史的に女性の科学技術者が少数であったのか、また今日なぜ女性科学技術者を増やそうとする政策が取られているのかなどについて考える。授業の割り振りは前者と後者で2:1くらいに計画している。 * 一般的な文化的社会的要素と違って、科学知識にジェンダーの影響が顕著に現れるのは、研究対象に性が存在する分野である。動物学、植物学、人類学、解剖学、進化論などに顕著な事例を見出すことが出来る。当然としてきたこれまでの科学知識をジェンダーという切り口で検討する面白さを伝えたい。 * 「本授業の目的およびねらい」の最初に「科学技術の研究はもっぱら男性によって担われてきた」と書いたが、もう少し正確に言えば、「近代科学は白人男性によって形成されてきた」とすべきで、科学にはジェンダーに関係する問題と同時に白人対黒人というエスニックな問題も存在することを知ってもらいたい。 * 「人の問題」ではノーベル賞の女性受賞者のことにはじまり、今日の科学技術者政策を論じる。英国の王立研究所は、ファラデーの名前とともに知られノーベル賞受賞者を輩出してきた科学の殿堂であるが、今やその頂点に立つのは女性脳科学者スーザン・グリンフィールド所長である。他方米国のMITも、これまた科学のメッカであるが、初の女性学長スーザン・ホックフィールドが就任。2007年にはハーバード大学にも、女性学長ドリュー・ファウストが就任。欧米のめざましい女性科学者の活躍に比して、わが国の科学技術政策はどうなのだろうか、またどうすべきかを考える。 * 予習の手掛かりとなる文献としては、とりあえず参考書の欄を参照のこと。そのほか授業の進展に合わせて紹介する。
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●成績評価の方法
機会を捉え、講義の最後15分程度の時間で、講義内容の確認をしつつ質問や意見を書いてもらい提出してもらう。提出枚数と内容は成績に加味されるものとする(30%)。定期試験(70%)。
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●教科書
残念ながら授業内容をそのまま網羅するようなテキストはないが、最も大きく関係する本は、小川眞里子『フェミニズムと科学/技術』岩波書店 本書以外で関連する必要事項についてはプリントを用意する。
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●参考書
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●注意事項
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