●本授業の目的およびねらい
脳神経外科の手術は医用工学技術の進歩により、近年、目覚ましい進歩を遂げている。最新の画像診断技術はミクロオーダーの神経線維や機能局在部位を描出できるようになり、精巧な脳の設計図が解明されつつある。名古屋大学には、世界屈指の脳神経外科手術室(Brain Theater)が完備され、顕微鏡下手術により世界最高レベルの手術が日夜実施されている。更には、脳神経外科手術はマクロからミクロへ、そしてナノの世界へとその神秘を解き明かすべく進化しつつある。この生命の根源である意識の中枢へ如何にメスを入れ、脳の病気を克服して行くのか、その一端をご紹介する。
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●履修条件あるいは関連する科目等
現代医療と生命科学全体での履修に準ずる。
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●授業内容
脳神経疾患領域の画像診断技術及び手術支援システムの開発は、近年の医工学連携技術推進により目覚ましい進歩を遂げています。高解像度の手術用顕微鏡を駆使して、数mmの誤差もないニューロナビゲーションロボットに映し出される精巧な脳の三次元画像を参考にして高精度で手術する技術は、まるで精巧な電子回路を修復しているさまを連想させます。一方、コンピューター工学の進歩により、3Dバーチャルイメージ技術は格段の進歩を遂げ、より詳細な実態に極めて類似した画像イメージが描出できるようになり、微細な病巣診断が可能となってきました。さらに、術中の脳形態の変位評価として術中MRI画像を利用した画像融合技術の発展により、ナビゲーションマップの術中補正が可能となり、ナビゲーション手術の最大の弱点であった「ブレインシフト」も一気に解決されました。こうした画像情報・組織情報および機能情報等の統合により、浸潤性で境界不明瞭な悪性脳腫瘍に対しても、最大限の切除による生命予後の改善と術後の機能予後の確保を両立させることが、現在の脳神経外科手術においても可能となりつつあります。この技術革新は、更にミクロの世界での手術機器開発へと進化しつつあり、現在、名工大及び名大工学部とともに、当教室は所謂「インテリジェント手術機器開発」を手掛け、世界にも類を見ない新たな術中センサーや極小手術機器開発を推進しています。その内容は、名古屋大学医学部附属病院手術室に、HITACHI製のMRIユニットを核とし、術中ナビゲーションシステム・手術顕微鏡等周辺機器が一体となって機能し、かつ、これまでの伝統的脳神経外科手術機器・手技を余すところなく生かすことができる安全かつ高性能な近未来型手術室です。この手術室をネットワークで結ぶことで、手術計画、術中画像の共有、遠隔手術支援、新治療の開発等を手術室外で行うことを可能にするという手術支援技術も構築されており、名大工学部情報工学科や名大医学部保健学科の技術支援により術前のシミュレーション手術教育や臨床現場のバーチャルイメージの共有による手術疑似体験学習にも役立っています。今後、このような3Dバーチャルイメージによる手術システムの改革は画像解析技術の進歩に裏打ちされて、急速に進化していくものと想像されます。
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●成績評価の方法
現代医療と生命科学全体での成績評価方法に準ずる。
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●教科書
特に指定はない
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●参考書
特に指定はない
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●注意事項
参考書や教科書にはまだ掲載されていない最新項目を講義する。
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