●本授業の目的およびねらい
メディアの世界においても、日本の常識は世界の常識ではない。日本のマスメディアの世
界においては、活字の世界と映像の世界に、これまでは大きな壁があった。また、メディ
アで仕事をする人間の中にも、jobを選んだのではなく、組織に従事している(「就社
」)という意識が強く働いていたことは否定できない。アメリカや世界のメディア界で働
く人間の意識は、これとは大きく異なっている。放送や新聞に働く人間の意識や志向とい
う点をきっかけに、アメリカやヨーロッパの放送、新聞の世界の特徴、動き、両者の関連
を、日本との比較において考えていきたい。
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●履修条件あるいは関連する科目等
特になし。社会の動きに関心を持つ人の参加を歓迎する。
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●授業内容
世界のメディア全体の状況を、放送・新聞の枠にとらわれず、まず俯瞰する。
その後、放送、特に報道番組、ドキュメンタリーを例に、欧米と日本の放送ジャーナリス
トの意識の違いと共通点を考えていく。
ドキュメンタリーにおける「演出」という切り口に、ドキュメンタリストが、個別の「事
実」からトータルな「真実」にどのようにして到達しようとしているかを考える。また、
ドキュメンタリーの歴史、変遷を踏まえつつ、ドキュメンタリーの企画、構成、コメント
などの面にも言及する。さらに、日本とアメリカ・ヨーロッパとの比較を通して、「テレ
ビとその背景にある社会」という点についても考えていく。
また、放送のみならず国際報道というジャンルにおいてきわめて重要な位置を占めている
ものに、「ドキュメンタリー」という表現形式がある。授業の後半では、このドキュメン
タリーという表現形式を材料に、国際的な報道番組がどのように制作されているかについ
ても考察したい。国際的なメディアの世界で非常に強い力を発揮するこのドキュメンタリ
ーだが、その定義、制作手法は個々の制作者によって実に様々である。ドキュメンタリー
という、社会的に大きな影響力を持ちうる表現手段の制作は、いわば「ブラックボックス
」であったとも言える。授業では放送と社会の関わりを、ドキュメンタリーの制作過程・
手法、そして視聴者の受容という観点から考察し、欧米と日本の放送ジャーナリストの意
識の違い、共通点などについても考えていく。
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●成績評価の方法
主にリポートによる。セミナーにおける発言も考慮する。
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●教科書
随時、米英仏の映像、新聞、雑誌記事等を活用する。
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●参考書
河村雅隆
『ドキュメンタリーとは何か〜テレビ・ディレクターの仕事〜』(ブロンズ新社)
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●注意事項
特になし
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