●本授業の目的およびねらい
20世紀後半、経済のグローバル化は国際的なルールに裏打ちされ順調な進展を見せ、N
IESやBRICs等の新興国の経済成長に寄与した一方で、その恩恵に与ることのでき
ない途上国の辺境化を助長したとも批判される。本授業は、経済のグローバル化に関係す
る法的規律の中でも、その中核をなすと考えられる世界貿易機関(WTO)法の全体像を
明らかにするとともに、WTO体制下で途上国がいかなる課題に直面しているか論ずるこ
とで、経済のグローバル化と開発問題に対する視座を与え、今後の学習のための基礎知識
を養う。
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●履修条件あるいは関連する科目等
特に履修条件はないが、日頃、新聞等を読んで、国際経済・貿易および途上国の開発に関
する問題に関心を持つことが望ましい。関連科目:グローバル化時代の国際社会等
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●授業内容
前半は、WTO設立に至る経緯、国際機関としての機構、WTOにおける国際的貿易紛争
の解決方法、無差別かつ自由な貿易を促進するための基本原則等を講義する。その基礎知
識を土台に、後半では、WTOのルールが途上国の開発や開発政策に対しいかなる影響を
及ぼしているのか具体的事例に触れながら検討すると同時に、現在難航しているドーハラ
ウンドにおいて途上国の開発問題への対応策を打ち出すことが可能なのか等を議論する。
1.経済のグローバル化とWTO(総論)
2.GATTからWTOへの歴史的展開
3.多角的貿易交渉フォーラムとしてのWTO
4.貿易紛争解決機関としてのWTO
3.GATTの基本原則:関税に対する規律及び数量制限の禁止と最恵国待遇原則
4.GATTの基本原則:内国民待遇原則と貿易関連投資措置
5.農業貿易に関するルール
6.サービス貿易協定(GATS)
7.貿易関連知的所有権協定(TRIPS)
8.WTOにおける途上国:「特別のかつ異なる待遇(S&D)」の歴史
9.WTO加盟交渉と途上国
10.途上国の紛争解決手続参加状況
11.「貿易と環境」および「貿易と労働」問題と途上国
12.「貿易と健康保護」および「特許と医薬品アクセス」問題と途上国
13.ドーハラウンド交渉と途上国
14.今後の展望
15.筆記試験
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●成績評価の方法
レポート(学期途中)30%および筆記試験(学期末)70%。
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●教科書
特定の教科書は使用しないが、毎回講義資料を配布する。
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●参考書
中川淳司・清水章雄・平覚・間宮勇『国際経済法』有斐閣、2003年
経済産業省編『2009年版不公正貿易報告書』経済産業調査会、2009年
オックスファム・インターナショナル『貧富・公正貿易・NGO』新評社、2006年
大坪滋編『グローバリゼーションと開発』勁草書房、2009年
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●注意事項
特になし。
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