●本授業の目的およびねらい
近代日本の歌謡文化を再考する。西欧の楽曲に日本の歌詞を摺り合わせて作られた文部省
唱歌に始まる近代日本の〈歌〉の文化は、民衆の間に脈々と歌い継がれた民謡や流行歌を
も含めて、西欧の歌唱文化の移入という前提からして多くの問題性を内包していた。それ
は、伝統へ移植された近代という、近代日本の文化そのものの問題性として捉えることが
出来るものである。本講義では単に近代歌謡を音楽ジャンルとしてのみ扱うのではなく、
文学を中心とした同時代芸術・文化の多様な活動の中に再配置して、それを文化の問題と
して読み解いていくことを目的としている。
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●履修条件あるいは関連する科目等
特になし。
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●授業内容
近代日本の歌謡、具体的には唱歌と童謡を中心に、講義の進度によっては民謡や流行歌に
ついても順次取り上げて講じる予定。講義形式だが、録音資料を通じて頻繁に歌唱の具体
例に触れてもらい、参加者で意見を交換する。講義内で全員にワークシートを記入しても
らい、毎回報告者を決めて簡単なコメントをしてもらうことも考えており、なるべく参加
者の意見や全体での議論が反映されるように講義することを心がけるつもりである。
以下、簡単な予定を掲げるが、進度によって追加省略があり得ることをお断りしておく。
1.導入
2.歌の文化、日本の歌について考える
3.唱歌の成立(1)
4.唱歌の成立(2)
5.唱歌を歌うこと、言文一致唱歌など
6.対抗文化としての童謡
7.童謡作家たち(1)
8.童謡作家たち(2)
9.高級文化としての童謡
10.大正期の童心主義
11.レコードと少女歌手、童謡舞踊など
12.民謡概念の成立(1)
13.民謡概念の成立(2)
14.新民謡と流行唄など
15.総括
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●成績評価の方法
平常点(出席点)20%、ワークシート提出20%、報告20%、レポートまたは試験4
0%
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●教科書
『日本唱歌集』『日本童謡集』(いずれも岩波文庫) 必要に応じてプリントも配布する
。
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●参考書
藍川由美『これでいいのか、にっぱんのうた』(文春新書)ほか。
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●注意事項
特になし。
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