●本授業の目的およびねらい
1 学術的な英語の文章を精読する力を養う。高校までの英語力によって、ものご
とを描写する類の英文は理解できても、抽象度の高い知的な議論を理解するまで
には相当の道のりがある。そのための「読みの姿勢」を学ぶ。
2 メディア研究の論文を通して、ニュース・バリュー、ニュース生産のプロセス
とイデオロギーの関係、グラムシの理論の応用などについて知る。
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●履修条件あるいは関連する科目等
なし。
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●授業内容
<テキストの内容について>
「客観、中立、バランス」は、ジャーナリズムが政治的勢力・国家的勢力から独立した
「第四の階級」の地位を主張する基礎となっている。その機能は、公共圏の中で独立し
た情報を提供することを通し、マスメディアの社会的責任と、民主主義社会の健康な働
きを保証するものとされている。だからニュース分析はメディア研究の核を成す。同時
にニュースは、文化商品である。この点には、ニュースとメロドラマとの類似性も見て
取れる。すなわち、際限なく続く事件と、決してそれらを総合しないという特徴である。
我々が日常的に接するニュースは、必然的に、制度的な圧力と構造の産物であり、選択
と構築の産物である。その研究の中心は権力の問題であるーーメディア機関と政府との
関係における権力、メディア機関の内部の権力。
(1)第一の論文は、初めに「ニュース・バリュー」について議論する。ニュース・バ
リューを構成する要素として、1)ドラマ性、2)視覚的な魅力、3)娯楽性、4)重
要性、5)サイズ、6)近接性、7)簡略性、などが挙げられる。
(2)第二の論文は、第一の論文よりも理論的である。ニュース生産のプロセスにグラ
ムシのヘゲモニー理論を応用する。数多くの「無秩序な」事件を秩序立てることは、ま
た意味を与えるプロセスでもある。そのやりかたは、意味のマップの中への事件の位置
づけよって成される。その地図はこの社会の写し絵であり、我々はすべてそれを共有し
ていると見なされる。解釈の枠組みの中におかれた事件は、破壊的・問題含みとして、
意味づけられる。「公平、バランス、客観」を確保しようとする作業ルールそのものが、
権力者の利益になるように機能すると議論される。メディアに関心のある人には、大変
興味深い議論である。
<クラスでの学生諸君の作業>
最初のクラスでモデルを示すつもりですが、一つのセンテンスを適宜区切りながら訳し
てゆきます。語法、構文、内容理解など、どれもおろそかにせず、丹念に英文を読み解
いてゆく作業をしてもらうつもりです。
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●成績評価の方法
(1)単語テスト、30点満点。(2)発表、10点満点。
(3)レポート、20満点。(4)学期末テスト、40点、
(5)授業時、教員の質問に正解すれば一回につき5点。
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●教科書
プリント教材を使用(南部生協1階購買奥の印刷部で各自購入。
その際、クラスの曜日時限担当教員名を確認すること)。
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●参考書
佐藤卓己『メディア社会 現代を読み解く視点』(岩波新書、2006)
佐藤卓己『現代メディア史』(岩波書店、1988)
ノーム・チョムスキー『メディア・コントロール』(集英社新書、2003)
金子勝他『メディア危機』(NHKブックス、2005)
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●注意事項
欠席と遅刻のルールあり。
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