●本授業の目的およびねらい
最近のリーディングの授業は多読・速読中心で先へ先へと急ぐ傾向がある。無論その方法
もTOEICのリーディング対策のための大意把握練習として重要であるが、同時に文法
と前後関係の両方を押さえて完全に理解しながら読む従来の方法も断じて疎かにすべきで
はない。高校時代とは違った精読による正確な読解力を養うと同時に、イギリスの文化と
イギリス人の考え方を理解し、それを批判的に分析するのが、本授業の主たる目的であ
る。
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●履修条件あるいは関連する科目等
各自の英語力に合わせて予習をし、できるだけ正確に理解しておくこと。授業では積極的
に質問およびコメントをすること。1回の授業で3ページほど進む。アット・ランダムに
担当してもらう。予習忘れは欠席扱い。真面目が肝心。
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●授業内容
ヴィクトリア朝の小説家ウィルキー・コリンズの幽霊物語とジョージ・ギッシングの短篇
小説を読む。込み入った筋と怪奇な事件のからむ小説を巧みな物語手法で書いたコリンズ
は、推理の知的側面にはエドガー・アラン・ポオほどの関心がなく、むしろ不可解な事件
や複雑な状況の漸進的解明に興味があった。生涯にに20余りの長編と7冊の短編集を残
したが、代表作としてはディケンズの雑誌『春夏秋冬』に連載した『白衣の女』と、カッ
フ巡査部長が活躍するイギリス最初の長篇推理小説『月長石』がある。秀才で将来を嘱望
されていたギッシングは、街の女を助けるために友人の金を盗んで退学となり、アメリカ
に渡って生活費のために短篇小説を幾つか書いた。ギッシングの小説はすべて電子化され
ているので、関心のある人は私のギッシングのホームページを参照のこと。コリンズや
ギッシングの書いた英語は模範的な標準英語である。日本人が英語の読解力を養うには
もってこいの作家であることは、ひと昔の大学受験や教養課程の授業で、彼らの小説がよ
く題材として使われていたことが証明している。昨今の学生の読解力低下とともに、その
テキストが徐々に使われなくなったが、再び彼らの短篇小説を精読することで諸君の読解
力を高めたい。少なくとも1ページに30分以上は予習に費やし、できるだけ正確に理解
しておくことが肝要。語彙力にない英語学習は苦痛であるから、日頃の予習で暗記に努め
るべし。今回は、コリンズは「ジェロメット嬢と牧師」、ギッシングは「高すぎた代価」
を読む。テキストは自作の電子テキストを使用するので買う必要はない。第1回目の授業
では、プリントを配って、授業内容をより詳しく説明する。この授業では逐次、インター
ネットを利用した英語学習の指導をしていく。受講者が大学合格という英語学習の強力な
動機に代わる新たな動機を見つける手助けもします。なお、授業の最初の10分は、スピ
ーキングとライティングのために、日常会話でよく使われる表現を毎週20個ずつ解説し
ます。これを覚えて日常会話やネット上で使うようにすること。そして授業の最後の10
分(授業の進み具合によってはカットされる週もあります)は、英米文化の摂取に努める
という意味で、文学作品の映画を鑑賞する予定です。ここでは定期的に学生諸君の感想と
意見が求められます。
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●成績評価の方法
出席・担当が30%。翻訳および単語の試験が70%。ボーナス点の課題がプラス
20%。
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●教科書
電子テキストに関しては第1回目の授業で指示する。基本的には、ウェブ上にあるワード
文書をダウンロードしたあと、プリントアウトしたものを使用すること。
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●参考書
高校時代の辞書には載っていない専門用語やその他の語彙を調べる必要があるので、また
専門課程の授業で最新の論文講読もあるので、必ず『リーダーズ英和辞典』(研究社、収
録語数27万語)を買うこと。文法に関しては江川泰一郎『英文法解説』(金子書房)。
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●注意事項
ボーナス点の課題をはじめ、授業に関する詳しいことは、授業担当者のホームページ(検
索エンジンで「松岡光治」をサーチ)の「学生のページ」を参照のこと。
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