●本授業の目的およびねらい
セミナーのテーマ:中学校や高等学校で学んだ、既存知識の組合せによる “問題解決型” の授業から、 大学における新しい知識を見いだす、 “問題発見型” 授業への橋渡しをめざす。 素材は、放射線。 キーワードは二つ、『なぜそう考えるのか?』と『自分の身は自分で守る!』。
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●履修条件あるいは関連する科目等
これまでの履修科目などによる制限はない。
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●授業内容
『自分の身は自分で守る』が一つ目のキーワード。 他から、安全だと言われて無条件に信じる人でなく、危険だと言われて、そのとおり恐れる人でなく、 大学生として“自分で判断する”、その基礎を養おう。 二つ目のキーワードは『なぜか?』。 名大キャンパスのさまざまな放射線環境を考える。その線量は?その源は? セミナーの素材は『放射線』、フィールドは『名大東山キャンパス』。 セミナーは、室内6回+、野外実習3回+、キャンパスツアー3回+、を基本とする。 ◯ 中学校と高等学校の理科、社会科、国語などで習った『放射線』を思い出そう。 ◯ 放射線とは?その種類と発生源。 ◯ 環境放射線の多様性、放射線と物質の相互作用。 ◯ 放射線の危険性と有用性 ◯ 自分たちの生活環境と名大キャンパスの放射線をはかろう。 ◯ 放射線量の多い所、少ない所、どれほどの違いか?なぜか? ◯ 放射線の有用性と危険性、キャンパスツアー ・アイソトープ総合センター ・宇宙地球環境研究所、年代測定総合研究センター ・微量環境物質解析ラボラトリー ・その他 その後、各自が興味を持ったテーマを選び、調べ、まとめ、発表する。
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●成績評価の方法
キャンパスツアー先の研究や同じ授業を受けているクラスメートの発表内容を聞いて、理解しにくい所や誤りが見いだされよう。それらに対する『質問』(キーワードの一つ“なぜか?”に相当)の的確性を評価の基本とする。履修取り下げ可。
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●教科書
なし、必要な図表や資料は図書館などで調べる習慣をつけよう。どうしても見つけがたいデータはコピーを渡す。
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●参考書
田崎晴明(2012)「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識」 朝日出版社.148頁. 文系の学生にも理解できるよう、基礎的な事項を含めて平易に書かれているので推薦。
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●注意事項
セミナーは、室内6回+、野外実習3回+、キャンパスツアー3回+、を基本とする。実習は授業補助員(TA)と共に行う。名大祭の期間中にキャンパスツアー(施設見学会)に参加し、疑問点を質問する。日時は、名大祭プログラムが公表されてから指示。質問事項は、それ以前の授業時間に練り上げる。参加必須。授業時間(出席日数)に数える。
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●本授業に関する参照Webページ
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●担当者からの言葉(Webページのみ表示)
2011年3月に起こった東京電力福島第一原子力発電所での事故は、これまでの日常生活において、気に留める必要が無かった様々な物理量を、意識の内に持ち込んだ。その中には、放射性核種や放射線についての物理量がある。たとえば、2013年6月16日の朝日新聞名古屋版には、『政府は被爆線量を年1ミリシーベルト以下にする目標を掲げ、、、』との記事が1面に掲載され,同じく6月19日の夕刊には、『地中の汚染水を調べる井戸から、1リットルあたり50万ベクレルのトリチウムが、、、』などの記事が掲載されている。 名古屋大学の卒業生は、様々な職業に携わり、世界各地での活躍が期待されている。ヘルシンキの最高気温がマイナス5度,あるいは、ダマスカスの最低気温が30度であると聞けば、自分が過去に経験した値から類推して、どのような服装でフィールドワークに赴けば良いか、その対応にさほどの苦労は無い。しかし、マイクロシーベルト、あるいはベクレルの数値が目の前に踊った時、それらがキャンパスのある名古屋での日常体験と比較して、どれほどのものであるかの経験が無ければ、値の評価は難しく、すべて行政府から公にされる指針が行動の基準となる。将来多くの分野で指導的立場に立つであろう学生は、しかし、なんであれ常にそのような指針が出された理由を考え、自分自身の行動に自ら判断を下す力を持つことが望まれる。 原子力発電所の事故で放出された放射性物質そのものを名古屋で直接観察する事は容易にはできない。しかし、自然界には、ウランやトリウムの娘核種やカリウムの放射壊変に伴う放射線が飛び交い、その量はキャンパス内においても、場所により大きく異なる。その値はどれほどなのか?場所により異なる理由は何か?測定機器に表示される数値は何を意味しているのか? について見て、さわって、考えよう。
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