●本授業の目的およびねらい
セミナーのテーマ: ヘロドトスの『歴史』を読む
このセミナーの目的は、参加者がそれぞれの視点から歴史学の古典であるヘロドトスの『歴史』を読み、自分の解釈を提示して他の参加者と議論することで、人文学(とりわけ歴史学)の面白さを体験するとともに、大学における学問研究の基本である「読み、書き、話し、さらに考えを深める」能力を身につけることです。
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●履修条件あるいは関連する科目等
ヨーロッパの文化や歴史に興味があること。学問への新鮮な好奇心を失うことなく、テーマに取り組むと同時に、担当教員、TA、及び他の参加者と、闊達な意見交換ができること。
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●授業内容
紀元前5世紀のギリシアの歴史家ヘロドトスがペルシア戦争の経緯について書き記した『歴史』全九巻は、その人間性への洞察をめぐる興味深いエピソードの数々が織り成す独特の魅力のために、歴史学における古典中の古典として読みつがれてきました。このセミナーでは、参加者による分担講読という形で、この作品の全容を把握するとともに、それぞれが最初に特定のトピック(「ヘロドトスと神話」、「ヘロドトスの女性観」など)を選択して、担当教員の助言のもとで各自が研究を進めることにより、自主的な学びの力も身につけます。
1.イントロダクションと研究トピックの選択 2.TAによる情報探索法とプレゼンテーション方法の解説 3.ヘロドトス『歴史』第一巻(分担発表) 4.ヘロドトス『歴史』第二巻(分担発表) 5.ヘロドトス『歴史』第三巻(分担発表) 6.ヘロドトス『歴史』第四巻(分担発表) 7.ヘロドトス『歴史』第五巻(分担発表) 8.ヘロドトス『歴史』第六巻(分担発表) 9.ヘロドトス『歴史』第七巻(分担発表) 10.ヘロドトス『歴史』第八巻(分担発表) 11.ヘロドトス『歴史』第九巻(分担発表) 12.研究発表 13.研究発表 14.研究発表 15.セミナー全体のまとめ
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●成績評価の方法
テクストの読解・分析力、課題の発表能力、討論への参加態度、期末レポートの内容という四つの観点(各25パーセント)から、総合的に判断します。3回以上欠席した場合は「欠席」として扱います。
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●教科書
岩波文庫のヘロドトス(松平千秋訳)『歴史』上・中・下をテクストとして使用するので、あらかじめ入手しておいてください。
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●参考書
初回の授業で紹介します。英語で書かれたコメンタリーのコピーなども随時配布します。
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●注意事項
基礎セミナーの趣旨の枠内で、古代ギリシア史研究の魅力を精一杯お伝えしたいと思います。積極的な参加を期待しています。
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●本授業に関する参照Webページ
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●担当者からの言葉(Webページのみ表示)
皆さん、こんにちは。文学部西洋史学研究室の周藤芳幸です。 ヘロドトスの『歴史』の冒頭近くに、リュディア王のクロイソスとアテネの賢人ソロンが、次のような対話を行ったというエピソードが伝えられています。当時、富裕な王国の支配者として栄華を極めていたクロイソス王は、自分こそが世界で一番幸福な人間であると確信して、あえてソロンに「世界で一番幸せな人間は誰か」と尋ねます。ところが、ソロンが次々に幸せな人間の例としてあげるのは、ごくありふれた人ばかり。苛立った王が、「お前は私の幸福がそのような者たちの幸福に及ばないと言うのか」と詰問すると、ソロンは人間の運命の移ろいやすさについて語り、最後に「神様に幸福を垣間見させてもらった末、一転して奈落に突き落とされた人間はいくらでもいるのです」と述べます。怒ったクロイソス王が、すぐさまソロンを立ち去らせたのは、言うまでもありません。リュディア王国が滅亡したのは、それから間もなくのことでした。 古代ギリシア世界の研究に本格的に携わるようになって四半世紀が過ぎましたが、ヘロドトスをはじめとする古代ギリシアの歴史家の著作は、何度読み返しても、そのたびに新たな感動を呼び覚まします。今期は、ぜひこの感動を1年生の皆さんと分かち合うべく、このようなテーマで基礎セミナーを担当することにしました。文系・理系を問わず、不易の人間性そのものに関心のある学生の皆さんの積極的な参加をお待ちしています。 担当者の教育・研究活動に関心のある方は、インターネットで私の名前を検索してみてください。
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