●本授業の目的およびねらい
セミナーのテーマ:方言文法全国地図を読む―方言から見る日本語・歴史・社会― 『方言文法全国地図』を題材として、図を読み解いて、問題を設定し、仮説を立て検証するという作業を踏まえ、発表を行う。討論を含む一連のスキルトレーニングを通じて、学問的探求のプロセスとそのおもしろさを体験する。本セミナーで扱う方言分布には、言語と文化・社会・地理・歴史的側面とその相互関係など多様な要因が関わる。興味ある側面から自主的かつ意欲的に問題を設定し、スタッフや他の学生との討論を通じて多様な見方に触れるとともに、人間的な交流によって多くを得る機会となることを期待する。
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●履修条件あるいは関連する科目等
関連する科目:ことばの不思議・表象と文化
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●授業内容
私たちのふだんの言語生活では、方言形式に出会う場面が少なくない。母方言と共通語を場面によって使い分け、まさしく両用している人もいるだろう。共通語で生活しているつもりの人も「なめたらアカン」「ワシらは無事じゃ」のような表現が、キャッチコピーやマンガ・アニメの特定のキャラクターのセリフとして用いられている例に自然に触れているだろう。それはどこの方言で、なぜその商品・キャラクターと結びつけられているのだろうか。 『方言文法全国地図』(全6巻、国立国語研究所)は、日本全国の文法的な方言差を取り上げた地図集である。たとえば、「起きろ」「起きない」「起きよう」といった活用形や、「(雨が)降っている」「降りそうだ」などの述語表現、「行ってはいけない」「寒いですね」などの対者表現、「こんばんは」といった挨拶など、多様な表現が取り上げられている。350枚の図から興味のある語(図)を選び、歴史・地理・社会・文化などさまざまな観点から方言形式の多様性とその分布に触れ、現代共通日本語との関係を考えてみよう。 『日本言語地図』(全6巻、国立国語研究所)(「ほくろ」「せともの」「じゃがいも」「太陽」「おいしい」「細い」「もらう」など単語の方言分布を取り上げる)から形式を取り上げてもよい。 具体的には、以下のような順序で進める。(1)-(3)のガイダンスののち、(4)受講者による発表と討論が中心となる。 (1)『方言文法全国地図』『日本言語地図』および方言地図類の概説 (2)方言地理学に関する概説 (3)基本的な調査方法、参考資料・参考文献の概説 (4)受講者による発表と討論 (5)全体を通してのまとめと反省
※発表に必要な参考文献・資料等は適宜紹介する。
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●成績評価の方法
発表(準備・内容・報告能力)50%、平常点(態度・意欲・討論への参加)20%、 最終レポート(発表・討論を踏まえてまとめなおしたもの)30% 欠席/F評価については最終レポートの提出有無を含め総合的な学修状況により判断する
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●教科書
特になし。必要に応じてプリントを配布する。
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●参考書
関連の深いもの、読みやすいものは以下の通り。 「方言文法全国地図をめぐって」『日本語学』臨時増刊号 2007年9月、明治書院/『ものの言い方 西東』小林隆、澤村美幸、岩波新書/『変わる方言動く標準語』井上史雄,ちくま新書/『全国アホ・バカ分布考』松本修,新潮文庫 等、その他授業中に提示する。
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●注意事項
発表・最終レポートには内容・体裁に責任を持つこと。 「責任を持つ」とは、引用のルール等を遵守すること、著作権へ配慮することはいうまでもなく、発表したものをいつどこで誰がみても、作成者自身の言として説明できるものにすることをいう。
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●本授業に関する参照Webページ
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●担当者からの言葉(Webページのみ表示)
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