●本授業の目的およびねらい
パラドックスを味わう: 論理的・科学的な一見妥当な推論から導かれているものの、直観的に許容し難い帰結のことをパラドックスと呼ぶ。本セミナーでは、哲学、数学、物理学、社会学など様々な分野で見出された種々のパラドックスを観賞し、それらの調査・分析・議論を通して、科学における論理的な思考や議論を体験することを目的とする。
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●履修条件あるいは関連する科目等
とくになし。論理学、数学、哲学のいずれかに興味があることが好ましい。
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●授業内容
本セミナーでは、様々な既知のパラドックスのいくつかを取り上げる。以下のような内容を予定している。
1. パラドックスとは 2. プレゼンテーション入門 3. 哲学におけるパラドックス:ゼノンのパラドックス 4. 論理学におけるパラドックス:ヘンペルのカラス 5. 数学におけるパラドックス:ガリレオのパラドックス、ラッセルのパラドックス、バナッハ・タルスキの定理 6. 物理学・天文学におけるパラドックス:双子のパラドックス、フェルミのパラドックス 7. 社会学におけるパラドックス:資源共有の悲劇、アローの定理
以上で挙げた例はごく一部である。個人、または少人数のグループでこれらのトピックから選択し、調査・分析を行った結果を発表し、参加者間で議論を行なう。さらにその議論を踏まえてレポートの形でまとめる。また、参加者各人は少なくとも1回の発表を行なうこととする。
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●成績評価の方法
出席、討論への参加状況、およびレポートによる。履修取り下げ制度を採用しない。 無断欠席は減点し、理由なく無断で欠席した場合は、状況に応じて評価を「欠席」とする。
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●教科書
とくになし。
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●参考書
必要に応じて紹介する。
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●注意事項
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●本授業に関する参照Webページ
http://www.sqlab.i.is.nagoya-u.ac.jp/~nakazawa/lectures/2017/kisosemi/
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●担当者からの言葉(Webページのみ表示)
大昔から現在に至るまで、幅広い分野においてパラドックスが見出され議論の種になっています。 一つの理由は、正しいと考えられている論理的・科学的な推論から、全く正しいとは思えない奇妙な帰結が得られることが人々の知的好奇心を刺激するからですが、もう一つの重要な理由として、パラドックスの発見が科学の大きな発展のきっかけになることが挙げられます。科学の理論から論理的な推論を行なうことによって直観的におかしな結論が得られた場合、それは、正しいと信用されてきた理論の瑕疵を原因としているかもしれないのです。
論理とは正しいとされる仮定から正しい結論を導くための「ルール」であり、その推論の過程は誰もが当然正しいと納得するものでなければいけません。しかし、多くのパラドックスが示しているとおり、論理的な推論は必ずしも容易ではなく、直観や先入観に簡単に影響されねじ曲げられてしまいます。 本セミナーでは、様々な分野で見出された奇妙なパラドックスを観賞して楽しむとともに、その内容を分析し議論することを通して、論理にもとづく科学的議論の方法を学ぶことを目的とします。
とくに前提知識は仮定しませんが、哲学的な内容に興味を持っていることを期待します。(担当教員は哲学の専門家ではありません。)
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