●本授業の目的およびねらい
基本となるジェンダー平等についてヴィジュアルな情報を提供する。その上で、男女共同参画社会にふさわしい科学技術のあり方を探る。近年に至るまで、科学技術の研究はもっぱら男性によって担われてきた。科学技術が価値中立であるなら、担い手の性は問題にならないと考えられてきたが、科学技術は必ずしも価値中立的(バリュー・フリー)ではなく、ジェンダー・フリーでもない。科学がジェンダーと深いかかわりをもって成立してきた歴史的事例を学び、欧米で進められてきた科学技術に関する女性政策の進展を理解しよう。
|
●履修条件あるいは関連する科目等
関連する科目としては、全学教養科目の「科学・技術の倫理」「科学技術史」「科学技術社会論」
|
●授業内容
最初の何回かの授業では、短い映像を見ていただくことを計画している。「科学技術とジェンダー」の授業だが、その土台であるジェンダー平等に関する知識について、これまでに集めた教材をわかり易く提供したい。最初の授業は、HeForSheツイッター運動の創始であるエリザベス・ニャマヤロの「女性にとってよりよい世界を望む男性を招き入れるということ」を見る。この中の終盤に名古屋大学への言及がある。次にニャマヤロが言及しているイギリスの女優エマ・ワトソン(映画ハリー・ポッターシリーズの人気女優)が行ったジェンダー平等に関する国連での感動的スピーチを取り上げる。次に男性からのメッセージも取り上げる。そうした蓄積の後、スウェーデン医学研究評議会の論文査読過程のジェンダー・バイアスに関する暴露を扱ったDVDも紹介する。その他に科学技術とジェンダー研究の第1人者ロンダ・シービンガーによるGendered Innovationsの解説映像など、短いヴィジュアルな教材をわかり易く提供する。その上で以下に述べるような、クイズやPPTによる解説も並行して行う。 * 科学的認識とはどのようなものであるかをさまざまなグッズで体験的に理解し、それを通して科学技術を客観的で価値中立的なものとする見方に揺さぶりをかける。固定観念を崩したところで、科学の歴史を新しい目で見直す。 * 内容は「知識の問題」と「人の問題」に大別できる。前者は科学知識あるいは技術の使われ方にいかにジェンダーが深く関わっているかを明らかにするものであり、後者はなぜ歴史的に女性の科学技術者が少数であったのか、また今日なぜ女性科学技術者を増やそうとする政策が取られているのかなどについて考える。 * 科学知識にジェンダーの影響が顕著に現れるのは、研究対象に性が存在する分野である。動物学、植物学、人類学、考古学、解剖学、進化論などで科学知識をジェンダーという切り口から検討する面白さを伝えたい。 * 「人の問題」では、女性の科学技術人材について話をする。近年に限れば日本はノーベル賞量産国なのに、なぜ女性のノーベル賞受賞者が出ないのだろう。ノーベル賞受賞女性一般の話から日本の特殊な状況について論じる。
|
●成績評価の方法
出席確認として講義の最後数分程度の時間で、講義内容の確認をしつつ質問や意見を提出する。提出枚数と内容は成績に加味され、出席を重視する(70%)。定期試験(30%)。履修取り下げ制度採用する。
|
●教科書
授業内容を網羅するテキストはないが、関係する本は 小川眞里子『フェミニズムと科学/技術』岩波書店(ISBN 4-00-026636-5)およびシービンガー『女性を弄ぶ博物学』工作舎(ISBN 4-87502-271-9)プリントを用意する。
|
●参考書
映像教材についてはその都度解説する。シービンガー『科学史から消された女性たち』工作舎。同『ジェンダーは科学を変える!?』工作舎。 同『植物と帝国』工作舎。ラカー『セックスの発明』工作舎。リュープザーメン=ヴァイクマン『科学技術とジェンダー』明石書店。舘かおる編『テクノ/バイオ・ポリティクス―科学・医療・技術』作品社。
|
●注意事項
|
●本授業に関する参照Webページ
|
●担当者からの言葉(Webページのみ表示)
ノーベル物理学賞を受賞された天野浩教授は、受賞インタビューの中で、諸外国の女性研究者の活躍状況に比して、わが国がとてもその面で遅れていることを指摘され、わが国の女性研究者の増加にも尽力したいと発言された場面がありました。このような発言が生まれてくる背景を理解することに、本講義は役に立つであろう。
|