●本授業の目的およびねらい
心理学は「心の理学」である.物理学が「物の理学」として物理世界の法則性を追求するのと同様,心理学は心理世界の法則性を追求し,人の心,あるいはその表出としての行動についての理解を深めていくことを目指す学問である.本講義では,入門として心理学の基礎的知識について述べた後,心が外界や自分自身をどのように認識しているのか,またそのメカニズムは何かを,最近の実証研究をもとに述べる.以上の内容の講義によって,心理学が明らかにしてきた心の側面を知るとともに,心を理解する科学的手法を学ぶことが,この授業の目的である.
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●履修条件あるいは関連する科目等
なし。
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●授業内容
人は,周りの世界は自分が見たとおりであり,また自分が経験したと思っていることは実際に経験したはずだと信じている.しかし,自分が見ている世界と実際の世界は必ずしも一致しておらず,また経験したことがないことがらをあたかも実際に経験したかのように思いこむことがあることが知られている.このような,いわば「心のイリュージョン」とでもいうべき「間違い」現象の背景にある心のしくみを考えるための基礎となる心理学の知見について述べる. まず,一般的な心理学の歴史,分野について説明した後,いくつかの間違い現象に関わるトピックを取り上げる. ○ 心を理解する科学的方法としての心理学:どのようにして心の働きを知るのか ○ 心理学にはどのような分野があるか:基礎から応用まで ○ 心のイリュージョン:外界(環境)および内界(自分の心)の理解のゆがみ ・視覚のイリュージョン:見えているモノは本当か ・記憶のイリュージョン:体験したと思っていることは本当か ・推論のイリュージョン:人は合理的判断を行っているのか ○ 日常世界における認知:実験室での研究と日常場面
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●成績評価の方法
小レポート(40%).最終レポート(60%) 履修取り下げ制度を採用する。
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●教科書
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●参考書
梅本尭夫・大山正(編著)心理学への招待「改訂版」心の科学を知る サイエンス社
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●注意事項
心理学の重要な研究法として実験や調査があり,授業でもしばしば触れることとなる。実際に実験や調査を体験することはこのような心理学の研究法の理解にとって重要なことであり,参加依頼をすることがある。
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●本授業に関する参照Webページ
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●担当者からの言葉(Webページのみ表示)
人の心の仕組みは,自分自身が「人間」であるためにわかったような気になっていることが多いが,実際には様々な思いこみによるバイアスを受けている.科学的なものの見方を身につけることによって,人の心が必ずしも自分で思っているようには動いていないという「メタ認知」を持ってもらうことが,この授業のもう一つの目的である. 一見とらえどころがないように思える「心」について,客観的,科学的に考える力を身につけてほしい.
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