教養教育院長 納谷信
学生の皆さん
教養教育院は、名古屋大学の教養教育を企画・実施するための組織です。
名古屋大学は、教育の基本目標として「自発性を重視する教育実践によって、論理的思考力と想像力に富んだ勇気ある知識人を育てる」ということを掲げています。知識人というからには、豊かな知識を有することは前提でしょうが、上の目標はその質について述べています。つまり、対象となる事象をどれくらい根本的なところまでさかのぼって理解しているか、また、周辺の事象との関わりをどのように捉えているかということが問われています。
このような理解のためには、ある程度の論理的思考力と想像力が必要でしょうが、厳しい受験勉強を経験した皆さんにはすでにこれらの能力が備わっているはずです。今後、教養教育を通じて、これらの能力をさらに伸ばし、質の高い知識を習得して下さることを期待します。また、それが可能になるよう、教育体制のさらなる整備と優れた教育活動の推進に努める、それが教養教育院の使命であると考えています。
さて、私の専門は数学で、毎年のように1、2年次専門教育科目である数学の授業を担当しています。しかし、大学に入るまでは、よもや将来数学の教育研究に携わるなどとは、想像すらしませんでした。私が数学に興味を持ち、その道に進んだきっかけは、まさに教養教育として学んだ数学にあり、教養教育は私の原点といえます。強い思い入れのある教養教育に院長として関われることを大変嬉しく思っています。
私は、まだ院長としては駆け出しで、教養教育の本質を語るには足りません。戸田山前院長は、教養教育は専門教育のための準備過程として存在するのではなく、それ自体完結した目標を持っているということを常々仰っていました。私も、自身の経験から、このことを強く実感しています。皆さんや先生方とともに教養教育を実践することを通じて、その意味をともに考え、ともに成長していくことを願っています。